過ぎ去ったかつての恋(5)建礼門院右京大夫

5.曇りの日の夜に・・

建礼門院右京大夫集  祥香書

最後は、「くもる夜の月」の題で
 
 「くもる夜をながめあかして こよひこそ
  千里にさゆる月をながむれ」

選字は、「久も流夜をな可免あ可して
     こ餘日こそ地沙と二散ゆる
     月を那可旡連」

「千里にさゆる月」は、『白氏文集』によります。
歌意は、「曇っている夜を一晩中、空を見て物思いにふけって過ごし、今度こそ千里の外まで冴え渡る月をながめることです。」

題詠は、設定が変化に富んでいますが、ひとつには、当時、話題になっていたり、注目されていた言葉や情景をもとにしているようです。固定観念にとらわれない姿勢が出ていて、好感が持てます。

もうしばらく、みていこうと思います。

参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社