恋にも様々あり題詠歌(1)建礼門院右京大夫

1.尾花が袖とは?

建礼門院右京大夫集  祥香書

夕暮れに野の花のそばを通りすぎる、という題の意味です。
尾花、ススキの穂がすでに出始めており、秋が深まりゆくことを感じます。

「尾花が袖」は、ススキの花穂は風に吹かれ揺れる様を、恋しい人を招く衣の袖に見立てて詠っています。

「心をば尾花が袖にとどめおきて駒にまかする野辺の夕ぐれ」
選字は、「心」、「尾花」を漢字で書き景色が映るように心がけました。一行目の動きが大きいところは、二行目を控え目にして、その反対もる留意しました。

選字は、「心越は尾花可そ弖爾登ゝめ
     於きてこ満耳ま可勢流遍の
     ゆ布倶連」

すすきの花穂が揺れる情景を、恋しい人になぞらえて、招いている袖のようだとは、当時の人の情緒豊かな感性がうかがえます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社