枯野にぬれた荻は(1)建礼門院右京大夫集から

1.資盛の枯れた花

建礼門院右京大夫集 祥香書

枯れた花を見て、訪れなくなった資盛を思い出していた作者ですが、この花は
実は十日ばかり前に資盛が持ってきて簾にさして帰ったものでした。

釈文:「この花は、十日余りがほどに見えしに、折りて持たりし枝を、すだれ
    にさして出でにしなりけり。

 あはれにも つらくも物ぞ 思はるる 
 のがれざりける 世ヽの契りに」

歌の選字は、「あ者れ爾も徒ら具毛物曽思はるヽ
       能閑連さり遣流世ヽ乃契里二」

歌意は、「しみじみと、つらくも物思いに心が乱れることです。前世からの縁
     で離れることができないのです。」

「契り」とは、前世からの約束。宿縁。因縁。
鑑賞:平安時代には、仏教の思想が盛んであり、前世からの因縁によってこの
   世のあり方が決まるという因果応報が信じられていました。人の力では、
   どうにもならない、現世であるという意味合いが含まれています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社