金沢本万葉集巻二(5)国宝を臨書して

5.内大臣へ宛てて

国宝 万葉集(金沢本) 藤原定信筆 祥香臨

次は内大臣にあてた鏡王女からの御歌である。内大臣とは藤原鎌足であった。鏡王女は天智天皇に愛されたが、その後鎌足の正室となる。

釈文:「内大臣藤原卿鏡王女をよばう時、鏡王女の内大臣に
    贈る歌」
原文:「玉くしげ覆乎安美開而行者君名者雖有吾名之惜裳」

鑑賞:「玉くしげ」は玉のようなよい箱である。
   「覆」は「おほふ」を「かへる」と訓ずる説もある。
   「開けて行かば」の「開けて」は蓋を開けるともかか
    るが、夜が明けてにかかる。

参考文献:万葉秀歌(一) 久松潜一著 講談社学術文庫