恋の山路に迷う身には(5)建礼門院右京大夫集から
5.出家してはどうですか
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「いづかたにか、経の声ほのかに聞えたるも、いたく世の中しみじみと物がなしくおぼえて、
迷ひ入りし 恋路くやしき 折にしも
勧めがほなる 法のこゑかな」
選字は、「まよ比意り志恋路久や四支折二
し毛須ヽ免可ほ奈る法のこゑ哉」
どこからともなく、お経の声が聞こえて、たいそう世の中がつくづく悲しく思われて、
「深く迷ってしまった恋の路を悔やんでいるそのとき、出家して仏門に入りなさいと勧めるような読経の声ですこと。」
それでも冷静な建礼門院右京大夫は、つらくても仏にすがろうとは思っていないのでしょう。どこか自分を客観視しているようです。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社