亡き父の筆跡を見て(4)建礼門院右京大夫集

4.花橘かおる

建礼門院右京大夫集  祥香書

雨が上がる頃に香ってきた花橘に一首詠んだ歌が、

 「たちばなの 花こそいとど かをるなれ
  風まぜにふる 雨のゆふぐれ」

用字を「堂地者奈能花こ處い登ヽかを流奈
    れ可勢ませ耳婦るあ免のゆ布
    具連」

歌意は、「どこからともなく漂ってくる花橘の香りが、雨上がりの頃の湿気を含んだ風に乗ってさらに匂い立ってくる」

雨が止む頃合いは、空気もしっとりと憂いを帯びたように感じます。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社