春、花を見る気持ちは(1)建礼門院右京大夫集

1.亡き兄のために

建礼門院右京大夫集  祥香書

作者には、兄が三人おり、伊経と尊円は後の年までお元気であったので、亡くなられた方は、行家と思われます。

 「失せにしせうとのために、阿弥陀経書くにも

   まよふべき 闇もやかねて はれぬらむ
   書きおく文字の 法のひかりに」

用字は、「うせに志勢うとの多免璽
     阿弥陀経可久璽も

   満よ布へ支やみ毛屋閑年て者れ
   ぬ羅無可記おくもし能法のひ可
   利耳」

歌意は、お兄様が迷われるであろう闇路も、私が写経した法の光に照らされているでしょうか。兄の成仏を願う、作者のやさしさが表れています。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社