建礼門院右京大夫、題詠歌を詠む(5)

5.心を二つに分けて

建礼門院右京大夫集  祥香書

四句目は、「秋の月に対し、春の花を待つ」の題で、

 「はやにほへ心をわけて夜もすがら
  月を見るにも花をしぞ思ふ」*①

選字は、「八や爾ほへ心をわ介てよ裳す
     から月越三る耳毛者那を
     し所於もふ」

歌意は、「桜の花よ早く咲いておくれ、夜の間わたしは心を二つにわけて、月を見ながら、
     春の花を思っているのです。」

同じく「山家集」に心を二つにわけて、春の花、桜のことですが、を待ち望んでいるという歌があります。

月を見ながら、春の桜を思って憧れるとは、よほど好まれていたのでしょう。とても贅沢な時を過ごしていたのかもしれませんね。

 *出典:①建礼門院右京大夫集 新潮社