建礼門院右京大夫集-宮仕えの日々(5)

5.水茎の跡

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「われならで たれかあはれと
     水茎の跡もしすゑの世に伝はらば」

歌意:だれがいったい、わたしだけの記念の家集に心を動かしてくれるだろうか。もしもこれから、したためる筆の跡が、後の世に残ったならば。

書き出しは、おそるおそる遠慮がちに、この家集の制作意図を述べています。千年以上も前の女官がこの世に生きた証として、文章をまとめる心意気に、感ずるところがあります。

これから宮中での、やり取りや出来事などを、書きながら見ていくこととします。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社