もっと読みたい名言の宝庫、書譜(3)

3.神融け筆暢ぶ

書譜  孫過庭  台北故宮博物館蔵 二玄社  祥香臨

こちらには、二ヶ所おすすめしたい名言があります。臨書をする楽しみは、古の人の筆跡に触れることで、自らの書技を高めることにあります。さらに、内容が心惹かれるもので
あれば、臨書をしながら学ぶことが多く、喜びが増します。

読み下し文:「神融け筆暢ぶ。暢ぶれば適わざる無く、豪(くら)ければ従る所無し。
      仁に当たる者は意を得て言を忘れ、その要を陳(の)ぶること罕(まれ)なり。」
                           出典:「書譜」 孫過庭

大意:「気分がのびのびとして筆も暢達する。筆が暢びれば心のままに動くが、手が動か
   ない時はどうにもならないものである。

    書の奥旨を悟った人は、いわゆる「意を得て言を忘る」であって、それを説明し
   ようとしない。
  出典:「書譜」 今井凌雪編

「神」の旁の縦画は「書譜」によく見られる特徴です。
「融」は偏に墨を集め、力強く「神」を受けてどっしりと働いています。
「筆」は軽やかな点から始まり、字形を下にすぼませています。
「暢」上の「筆」を偏の「申」を太くして支えています。

そして「得意忘言」では、柔らかい書きぶりで流れを作っています。