前赤壁賦を臨書して(12)蘇軾の意を汲む
12.月の光が
歌に合わせて吹く音色が、憂いを帯びていたのを、いぶかしく思った蘇子はなぜかと尋ねる。すると、
釈文:「客曰、月明星稀、烏鵲
南飛、此非孟徳之詩乎。」
書き下し文は「客曰く、月明らかに星稀に、烏鵲南に飛ぶと
は此れ曹孟徳の詩に非ずや。」
鑑賞:「月明星稀烏鵲南飛」月の光が明るく星が稀な夜、カササギが南へ飛んでいくの意。魏の曹操『短歌行』の一句である。現存する最古の作である。
『短歌行』とは、楽府題の一つで、連句の一体。表4句、裏8句、名残の裏4句の24句をもって一巻とするもの。
本文では「稀」の偏二画目が左へ大きく張り出して伸びやかである。
参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社