ひそやかに漂う香り(2)梅を詠う
2.はらはらと散る花
唐の書法を学んだ林逋にちなみ、褚遂良・蘭亭叙にも及んだ米芾「蜀素帖」を一部倣っています。
「衆芳揺落独暄妍
占盡風情向小園」
読み下し文は、「衆芳揺落して独り暄妍
風情を占め尽くして小園に向かう」*①
多くの花がはらはらと散ったなか、たった一つ暖かく美しい
風雅な趣きをひとりじめして、小さな庭に向かう。
「衆芳」は多くの種類の花たちが香り豊かに咲いている様子が浮かびます。それがすぐに「揺落」ひらひらと散る、と場面が変わります。初めは水墨画だったものが、彩色されてイメージが鮮明になっていくような始まりです。
出典:*① 漢詩をよむ 佐藤正光 NHK出版