ひそやかに漂う香り(3)梅を詠う

3.暗闇にただよう

 「疎影横斜水清浅
  暗香浮動月黄昏


読み下し文は、「疎影横斜して 水 清浅
        暗香浮動して 月 黄昏」

 粗い影が斜めに落ち、水は浅く清い
 闇の中に香りがただよい、月は黄色くやや暗い。

この箇所は、とても印象的に梅の姿を表しています。直接的に梅の様子を描写せず、影と香によってその存在を匂わせているのです。春を先んじて花をつける梅は、小さな花弁なのでうっかりすると見落としてしまいがちです。

でも、どこからともなく漂う香りによって、明らかに梅の花であると気づくのです。その喜びは控えめでありながら、溢れる春の喜びに満ちています。

 参考文献:漢詩をよむ 佐藤正光 NHK出版