スピードが大事、道元歌(3)

3.仏道を学ぶには
正法眼蔵随聞記 二・一九にある学人が問います。

「私は仏道を学ぶことを心がけて年月が経ちますが、未だに悟りを得ることができません。仏道を学ぶには聡明であるとか知恵があるとか、性質とか天分は関わりがないと聞いています。愚鈍な私ですが、

その私でもなし得る昔からの作法で気をつけなければならないものがあるとすれば、それは何でしょうか」

道元は答えて、
「あなたの言う通り、仏道を学ぶ上に多聞高才などは全く関係がない。にもかかわらず、宗の禅林でも、一師匠の門下が数百千人あるうち、道を得、法を得た人はごく少数に過ぎなかった。要は志が切実か

弱いかの問題なのである。仏道を欣び求める志は世間の無常を思うところに発してくる。「無常迅速、生死事大」。常にこのことを念頭に

していない限り、生死の迷いから生ずる輪廻を断ち切る大きな仕事を成し遂げることができない我が身に引き当てて切に「無情迅速。生死事大」の道理を思うべきなのである。」*①

正に、懇切丁寧に示してくださっているのです。

            *出典:①道元の和歌 松本章男