雨ふりて、つれづれなる日に(6)和泉式部日記から

6.いっそこの長雨で

釈文:「と書きて、紙の一重をひき返して、『ふれば世のいとど憂さのみ知らるるに けふのながめに水まさらなん』」

選字は「と書支傳可美の一重越ひき返して 婦連者よ能意登ヽ憂佐の見し羅るヽ 耳遣布農難可め二水ま沙ら奈無」

鑑賞:「紙の一重」この時代の手紙は同じ薄様を重ねて用いたが、中の一枚の裏に書いた者と思われる。和歌では「世の」は「うさ」に「いとど」は「知らるる」にかかる。

歌意は「年を重ねれば、つらいことばかり多く、一層の事今日の長雨が水かさを増し川に溺れてしまいたいものです」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注新潮社
     和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫