春の終わりに詠じたい和歌(1)和漢朗詠集から

1.今日限りの春の

釈文:「今日とのみ春をおもはぬときだにも 立つことやすき花のかげかは」躬恒

選字は「けふとの美者るをお无はぬと支た爾无 多つことや春き者那の可介か盤」

鑑賞:『古今集』春下最後に「亭子院の歌合のはるのはてのうた みつね」として出る。「亭子院」は平安京七条二坊にあった宇多上皇の離宮。宗祇によると「たけたかくあはれ深かるべき歌にこそ」とある。

現代語にすると「立ち去ることが容易にできる花の陰であるか、立ち去りがたいものである。まして、春は今日限りだと思うので、いよいよもって立ち去りにくい。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫
     古今和歌集 佐伯梅友校注 岩波文庫