資盛へ便りをさしあげようと(4)建礼門院右京大夫集から
4.ご兄弟の訃報に
転々と居所を移す平家一門の方に便りを差し上げることもひとかたならぬご苦労があったのでしょう。
詞書「わざとはまたかなはで、これよりも、いふかたなく思ひやらるる心のう
ちをもえいひやらぬに、このゆかりの草は、かくのみみな聞きし頃もあ
だならぬ便りにて」
選字は、「わ佐と者万多
閑那者てこれよ利裳い布可た奈久
思比やら流ヽ心のう遅越えい日やらぬ二
こ農遊可りの草は可久能美ヽ奈きヽ志頃
しもあ多那らぬ多梨耳て」
大意は、「特別に便りをさしあげることはできないので、こちらからは言いよ
うのない気持ちで、言い逃れずにいるうちに、ご兄弟の訃報を聞い
たその頃」
お手紙を差し上げるのは憚られていたけれども、ご兄弟が自ら死を選ぶとい
うつらい知らせを耳にして、なんとか便りをしたいと思っていました。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社