何も思いわずらうことがない(2)酒徳頌から

2.濁酒をすすりながら

酒徳頌巻 董其昌 祥香臨

銜杯漱醪
 奮髯箕踞」


読み下し文は、「杯をふくみ醪をすすり、髯をふるって箕踞(ききょ)し」

「醪」:濁り酒のこと
「銜杯漱醪」は杯を口にし、濁酒をすする、の意味。

「箕踞」:両足をのべ、あぐらをかいて座ることで礼儀に、はずれたすわり方
「奮髯箕踞」は、髯を捻り、両足を投げ出して坐る。*①

現代語にすると、「杯を口にふくみ、濁酒をすすりながら、ヒゲをふるいあぐらをかいて坐っている」

礼教の高貴な人々と対照的な存在である大人先生は、まさに傍若無人な態度で気ままにふるまっています。この箇所を、董其昌の酒徳頌では抜け落ちていたところを補いました。

出典:*① 漢詩と名蹟 鷲野正明 二玄社