「月よみの光を・・」良寛の和歌(4)

4.万葉集風の良寛歌
二)万葉集風を主とする
良寛は、自然に生まれた情感を言葉にして詠んできた万葉集を第一としていました。
歌風の特徴として万葉集を旨としていることからわかります。

「月よみの光を光を待ちて帰りませ山路は栗のいがのしげきに」は

万葉集巻四(相聞)の
 「月読の光にきませ足ひきの山きへなりて遠からなくに」 (670)

 「夕闇は道たづたづし月待ちていませ我が背子その間にもみむ」(709)
などの影響を受けたのでしょうが、相聞の感情を友情表現に変化させた見事さには感嘆させられます。*①

三)情緒の素直な表現
従来我が国でわが国で唱えられた歌論も、その立脚点は『詩経』の詩論である。その根源は詩経にあり「詩は志のゆく所なり、心にあるを志となし、言に発するを詩となす」とあ

る。これを継承したのが『古今集』で「やまと歌は人の心を種として、よろづの言の
葉となれりける。世の中にある人、ことわざしげきものなれば、心に思う事を、見る物
聞くものにつけて、いひ出せるなり」と説いています。*②

和歌や漢詩をはじめ多くの芸術は、自然にわき起こる情懐が言葉や絵画など形を成していくものです。良寛はそれをそのままに、手をつけずに表している点が、人々の琴線に触れるのでしょう。
            *出典:①和歌の解釈と鑑賞事典  井上宗雄他編
                ②良寛歌集  渡辺秀英

良寛書 祥香臨