懐素『自叙帖』を書いて(6)-小楷と草書-

6.懐素長沙に
釈文:「懐素家長沙。幼而事佛。」

鑑賞:懐素は張旭とともに「張顛素狂」といわれ、狂草をもって知られる。狂草とは、草書をもっともくずして、自由奔放な書きぶりをさす。酒の酔いにまかせて筆をとれば、縦横無尽に書きまくる。宋代以降、卒意の書を尊ぶものに尊重された。

なかでも『自叙帖』は随一といわれる。書法は古法をよく学んだのち、古法から脱して草書三昧の妙境に至ったとされる。

解説:書き出しは自分の書き慣れた名であるためか静かにはじまる。「家」の起筆は逆筆で筆の力をため、動きがあり大きく右へ打った点がバランスよい。

「長沙」二字の連綿はあたかも一つの文字であるかのような滑らかさを保ちながら、決して筆の圧力を逃さず、張りを保った書線が心地よい。

参考文献:自叙帖 懐素 二玄社