俳諧と俳句「さみだれを」から(1)
1. 「さみだれをあつめてすゞし?もがみ川」
「もかみ川乗らんと大石田と云処に
日和を待爰に古き俳諧のたね
落こほれてわすれぬ花のむかしを
したひ芦角一声の心をやはらけ此
道にさくりあしして新古ふた道に
ふみまよふといへとも道しるへする人し
なけれはとわりなき一巻を残しぬ
このたひの風流爰にいたれり」*①
大石田の高野一栄、奥州俳壇の一員ですが、催した句会が旧暦五月30日にありました。
これが、名高い「さみだれを」の歌仙です。この句会で、発句を芭蕉が詠みます。
「さみだれをあつめてすゞしもがみ川」 芭蕉
そして、脇句で一栄が
「岸にほたるを繋ぐ舟杭」 一栄
芭蕉翁を蛍になぞらえて、舟杭にとめておきたいと詠んでいます。
ここで、よく知られている「さみだれをあつめて早し最上川」と勘違いしているわけではありません。実はこのあと、奥の細道に書かれているのです。その辺りの経緯については
次回にいたしましょう。
*出典:①芭蕉自筆 奥の細道 岩波書店
参考文献:出羽路の旅 梅津保一