俳諧と俳句「さみだれを」から(2)

2. 俳諧の歌仙とは
現在、テレビなどでもおなじみの「俳句」といえば、季語がある、五・七・五の型式でしょう。ただ、こう呼ばれるようになったのは明治時代から正岡子規たちによって定着した
ものです。

これに対して「俳諧」は連句を楽しむものでした。連句とは、長句(五・七・五)と短句(七・七)を交互に付けるものです。三十六句つなげるものを「歌仙」と呼び、第一句を「発句」、第二句は「脇句」といいます。

俳諧で重視するのは変化です。特定の主題を持たず、情景や主題などを変えていきます。
季語は「発句」の決まりごとで、付けていく句には必要ありません。そして、「客発句・亭主脇」といい、客は挨拶で初めに詠み、客はこれにこたえて、応じるのです。

前回見た、「さみだれをあつめてすゞしもがみ川」では、客として芭蕉が発句を詠んでいます。その際、主人のもてなしに対して、感謝の気持ちも込めて「すゞし」と表したと考えられます。

事実、歌仙「さみだれを」は紀行中、芭蕉自ら懐紙に清書をし、旅の記念として遺した
唯一の歌仙でした。芭蕉も感極まった様子で、「風流爰にいたれり」と記しています。

芭蕉自筆  奥の細道  岩波書店  祥香臨

                      参考文献:墨 234号 伊藤善隆