うぐいすの声にいざなわれて(5)和漢朗詠集を書く
5.うぐいすの声に引かれて
うぐいすの声が心地よく響く季節になってきた。
釈文:「鶯聲誘引来花下、草色拘留坐水邊」白
書き下し文は「鶯の声に誘引せられて花の下に来る 草の色に拘留せられて水の辺りに坐(を)り」
鑑賞:これは『白氏文集』「春江」七言律詩の頸聯(律詩第五・第六の両句)から出典。楽天が四十九歳の作。のどかで美しい春の暮らしぶりが詠まれている。
平安期の貴族の美意識にかなったか、広く好まれ、『千載佳句』巻上に頷聯と頸聯とが各々引かれている。大江千里は上句を題として「鶯の啼きつる声にさそはれて花のものにぞ我はきにける」と翻案的な歌を詠んだ。
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫