ダイナミックな王羲之、喪乱帖(4)
4.二謝帖も同じ時代に書かれた
喪乱帖は三つの尺牘の総称で、上記の五行は、一行ずつの断簡「二謝帖」です。
「一行目の『良不』の左には、梁時代の武帝のもとで内府の書跡を鑑定した姚懐珍
(ようかいちん)の署名の一部が見られることから、原本は、梁時代に真蹟と認め
られたことがわかる。*
原文:「二謝面未。比面遅詠 良不 静羲之女愛。再拝。想部児悉佳。前患者善。
所送議當試尋省。左邉劇。」
この手紙は、文字の大小と細太がはっきりとしています。王羲之の特徴がよく表れて
いる箇所です。王羲之の書は、日本のかな文字の成立に大きな影響を与えています。
特に細線で書かれた三行目の上の部分は、連綿が滑らかに続いていて一つの文字の
ように見えます。
日本ばかりではなく、後の中国の人々にも計り知れない貢献をした「書聖」が王羲之
でした。
*出典:「書聖王羲之の世界」 島谷弘幸監修