はかない契りを嘆いても(5)建礼門院右京大夫集から
5.あの人と私との間にある
釈文:「なげきても 逢ふ瀬をたのむ 天の河 このわたりこそ かなしかりけれ」
選字は「難希支ても逢ふ瀬を多の無天の 河こ能わ多りこ曽か 那し可里遣れ」
鑑賞:「このわたり」は資盛と自分とを隔てるあの世とこの世との渡りと「あたり」の意味をかけている。「瀬」と「わたり」は「天の河」の縁語である。
『拾遺集』恋一・よみ人しらず「たあ菜畑も逢ふ夜ありけり天の川このわたりには渡る瀬もなし」の類似歌がある。
歌意は「年に一度の約束を嘆いても、織女は彦星との逢ふ瀬を頼みにすることができるけれど、私には越えられない渡りが悲しくねしかたがない。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社