西行筆と伝えられる山家心中集は(8)臨書して
8.かこち顔の表現
鑑賞:この歌は『千載和歌集』巻十五・恋歌に収められる。詞書には「月の前の恋」の題が置かれている。月はあわれの気持ちを誘うからといって、涙を月のせいするのは違うでしょう、恋の成せること、と告げている。
また、「かこち顔」は恨みがましい様子であるが、この表現は、藤原俊成・重家などの歌壇の代表的メンバーたちは避ける表現だった。
正統派の貴族たちには、口語的で砕けた印象の「〜顔」はふさわしくないと考えられたのかもしれない。しかし、西行は気にせずに用いて、この歌は百人一首に入り代表歌となった。
参考文献:和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編 笠間書院