石山切から書と工芸の調和をみる(1)伊勢集より

1.石山切とは

石山切 祥香臨 東京国立博物館蔵 

石山切とは、「本願寺三十六人家集」から昭和四年に分割された「貫之集下」および「伊勢集」の断簡である。切名は本願寺の旧所在地である石山(現在の大阪城付近)にちなむ。

この「伊勢集」は色の異なる唐紙を破れ継ぎにした上に金銀泥で草花・折枝や鳥を描いた華麗な料紙を用いている。分割は、当時実業家で茶人として名高い益田鈍翁らの助言を受けてのことだった。

「本願寺本」は当時を代表する二十人の能書によって分担執筆された。この「石山切」の筆者は「友則集」「斎宮女御集」も書写した。

参考文献:書の美 島谷弘幸著 毎日新聞社