詩書切を臨書し特徴をよむ(1)和漢朗詠集から
1.筆跡の特色は
原本は東京国立博物館に所蔵されている「詩書切」である。一見して、細太がはっきりとしてリズミカルな小気味良い運筆である。臨書をすると、一画一画を繊細に変化させながら、転折は硬くなりすぎず柔らかく次へとつながっている。
筆者は藤原定信(1088〜1154)と思われる。今日、定信の自筆とされるものは、小野道風筆「屏風土台跋語」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、藤原行成筆「白氏詩巻跋語」(東京国立博物館蔵)があり、署名によって明らかとなっている。
他にも「本願寺本三十六人家集 貫之集下・中務集・順集」(西本願寺蔵)、「金沢本万葉集」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)などの筆跡がある。これらとの比較によって定信の真跡であると確認されている。
参考文献:書の美 島谷弘幸著 毎日新聞社