涙がとめどなく流れて(5)建礼門院右京大夫集にて
5.我が身の行方は
釈文:「この頃聞くはいたくしみじみとおぼえて、ものがな
しく、涙のとまらぬも、ながらふまじきわが世のほ
どにやと、それはなげかしらからずおぼゆ。」
選字は、「この頃支
久盤い多倶しみヽヽと於本えて裳能可
難し久奈美多農登ま羅ぬも奈か
ら婦ま事支わ可世のほと耳やと曽れ者な
希か志可ら須お本ゆ」
大意は、「このころ聞くには、大変見にしみて感慨深く、も
のかなしく、涙がとまらないことも、私が生きな
がらえない寿命のせいであろうかと、特に嘆かわ
しくは思われないのです。」
鑑賞:「それ」は前の「ながらふまじきわが世のほど」を指
しています。長生きはできそうもない私の寿命です
が、嘆くことにはあたらないの意。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社