恋すれば私の身は(6)関戸本古今集を臨書して
6.涙の河に
「はやき瀬にみるめおひせば
我が袖の涙の河にうゑてみましを」
選字は、「者や支せにみるめ於ひせ八利可そて
のなみたのか者爾う衛て三まし
遠」
書き始めは「者」で小さく、次に「や」で大きく広げる手法は新鮮です。「や」
の終筆は短く締めています。続く「に」の縦画は上の「や」より広くせずに右へ
働く字となっています。左右の動きを繰り返しながら、一行目は右へ流れます。
二行目の冒頭は墨の薄さが際立ち、立体感が生まれます。畳み掛けるように墨つ
ぎのあとは文字をつなげて塊となります。終句は、「遠」に墨を継ぎ、存在感を
出しています。
参考文献:関戸本古今集 二玄社