恋すれば私の身は(5)関戸本古今集を臨書して

5.かがり火の影のほうは

関戸本古今集 祥香臨

篝火の影となる身のわびしきは
 なかれてしたにもゆるなりけり


選字は、「かヽ利ひの可けとなるみのわひし支八
     な可れて志多爾裳ゆるな利介利」

鑑賞:ゆったりとした書き振りからは、激しい恋の歌であるとは気付きにくいと思います。
   ただ、「かヽ利ひの」から「可け」は急に渇筆となり、墨色も薄く寂しげです。

   二行目の「な可れて」の「れ」から「て」は連綿線がよく動いて左の空間へ働きかけ
   ています。さらに「志」の終筆で左へ張り出しています。そして「裳」で右へ向きを
   変えて左右の動きが自然に流れています。

歌意は、「篝火の影は流れて水の下で燃え、作者は泣かれて胸中で恋の思いに身を熱くす
     る」
 参考文献:古今和歌集 佐伯梅友校注 岩波文庫