花の姿と熊野の波(4)建礼門院右京大夫集を書いて
4.つらい目にお会いになって
「かなしくも かかるうきめを み熊野の
浦わの波に 身をしづめける」
選字は、「か那志久裳可ヽ流う支免をみ
熊野のう羅わ農波二身越しつ
免希る」
現代語にすると、「かなしいことに、こんなにつらい目にお会いになって熊野 の浦の波底に身をしづめられた維盛様ですこと」
鑑賞:「うきめ」は「憂き目」と「浮き海布(め)」の掛詞。
「浦わ」は海岸線が湾曲したところで、熊野灘をのこと。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社