あなたへ手紙を差し上げなくても（4）建礼門院右京大夫集を書いて

4.西海へ落ちても

「いづくの浦よりもせじと思ひとりたるを、『なほざりにて聞えぬ』など
　なおほしそ」

選字は、「い徒久の浦よ利
　　　　　も勢しと思ひと里たるをなほさ
　　　　　梨爾て聞えぬなと難お本し處」

意味は、どこの海からも（手紙など）出したりするまいと決心しているので、
　　　　あなたのことをおろそかに思って便りもない、などと思わないでく
　　　　ださい。

鑑賞：「いづくの浦」は平家一門の人たちと西海へ落ちていく身なので「浦」
　　　　と表したものです。これからを思い、浮ついたところが少しもない
　　　　切々と畳みかけるような資盛の言葉です。

　参考文献：建礼門院右京大夫集　糸賀きみ江校注　新潮社