思いもしなかった所で言い寄られて(3)建礼門院右京大夫集を書く
3.あなたへ寄せる思いは
月がかすんで私の様子がわからなかったでしょう、とことづけてよこした歌です。
「思ひわく かたもなぎさに よる波の
いとかく袖を ぬらすへしやは」
選字は、「お无ひ王久か多毛那きさ爾夜る波の
い登可供處弖をぬら須遍しや八」
歌意は、「干潟をなくして寄せる波が、袖を濡らすように分別をなくして、あなたへの思いで袖を濡らさなければならないのでしょうか。」
渚に打ち寄せる波に託して、自分の思いを打ち明けながら、その思いが並々ならむものであることを言葉巧みに歌い上げるさすがに恋の道に熟達した人物ですね。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社