思いもしなかった所で言い寄られて(2)建礼門院右京大夫集を書く

2.人づてによこしたものは

建礼門院右京大夫集 祥香書

尼僧と親密に語り合っていると誰からかわからない書付とともに、
 「頃はうづきの十日なりけるに、『月のひかりもほのぼのにて、けしき見えじ』などいひて、人につたへて、その男はなにがしの宰相中将とぞ。」

選字は、「こ路者うつら*能十日
     なわける二月の飛可り毛ほのヽヽ爾て
     希志支え見盈しなとい日弖人爾

     徒多遍て所の男那爾可しの宰相中将と所」

大意は、「頃は、卯月十日に『月の光もかすんで自分達の様子も湧かないでしょう』などと言って人にことづけて歌をよこしたのですが、宰相中将**とのことでした。」

*誤字で正しくは、「き」
**実際、隆信は、宰相中将にはなっていません。

もったいぶった歌の贈答からして、手練にたけた人らしいです。この人物が、藤原隆信といい、絵画・和歌に長じた貴族です。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社