寸松庵色紙を鉛筆で鑑賞する(2)
2.書かれた時代を訪ねる
寸松庵色紙が描かれた時代は、十一世紀中頃から後期頃と言われています。
それは、一つには、料紙から推察されるものです。中国からの美しい唐紙を
用いていて現在の古典研究から、「粘葉本和漢朗詠集」などに近いとされて
います。
さらに唐紙の地色に型文様が用いられています。
次に書風です。以前に臨書した「高野切一種」のゆったりした温雅な書は
十世紀初頭から十一世紀半ばと言われています。寸松庵色紙の書は明らかに
時代が下った新味を見せながら、連綿体の線に緩みがなく緊張感をも含んで
います。こうした書風は、やはり、時代の要請もあったものと思われます。
書風としては、関戸本古今集の方により近いかと推察されます。その理由は
動きのある書線に包含された字形が、色紙の空間を躍動感あふれるものに
しているからです。