涙の露ぞ(4)建礼門院右京大夫集
4.空も心もかき乱れ
釈文:「かきくらす 夜の雨にも 色かはる
袖のしぐれを 思ひこそやれ」
選字は、「か支久羅春夜のあ免爾もい路
可波る處弖の志久連越お毛
ひこ楚やれ」
歌意は、空も心もかき乱し暗く降る夜の雨につけても、喪服の袖が色あせるほど、涙にくれておられることでしょう。
喪服の袖の色が変わるほどの様を、夜の雨に例えて詠んでいます。和歌では、時雨と涙を重ねて読むことが多く、源氏物語にも見られます。*①
出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社