風の便りに(1)建礼門院右京大夫集より
1.御匣殿(みくしげどの)の
釈文:「御匣殿の里にひさしくおはせし頃、弁の殿の、その御里へまゐりてかへりまゐられたりし、「などかこのたよりにもおとづれはせぬ」とのたまひしかば」
選字は、「御匣殿の佐と爾ひさし九
おはせしころ(流*)弁の殿の
所農御里へま井利て可
遍り万ゐられ多里志な
登可こ能堂よ利耳毛
於とつ連ハせぬと農た万日
し可盤」
大意は、御匣殿がお暇をとられてお里に下がっていた頃、弁の殿がそちらへ参られた。お戻りになった時のことづてに「どうして弁の殿が来られたついでに手紙をよこさないのか、とおっしゃったので。
「御匣殿」はお裁縫を担当する部署の長官または女官であり、「弁の殿」がどなたか、はっきりしたことは未詳です。
こちらは、贈答ではなくて、なぜお手紙をくれないのかしら、という不満が伝わってきたようです。それに対してお答えはお歌で返します。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社