大河が浮き草を浮かべて(4)酒徳頌を董其昌が書く

4.物の数に入らない

焉如蜾蠃之与螟
 蛉

読み下し文は、「蜾蠃(から)の螟蛉(めいれい)と与(とも)にするが如し。」

「蜾蠃」:ジガバチ
「螟蛉」:青虫

現代語にすると、「ジガバチと青虫のように物の数にも入らないのであった。」*①
二人の礼儀を重んじる身分の高い人たちが議論をふっかけても、何の問題にもせず、どこ吹く風のようだった、ということです。

「蜾蠃」の「蠃」は複雑な字であるばかりでなく、異なる時も存在してわかりにくいのですが、董其昌は意に介せず筆を駆使しています。
まさに意先筆後の心境なのでしょう。

出典:*① 監視と名蹟 鷲野正明 二玄社