気持ちを軽く(2)リラックスして書く
2.まだ紙がない時代
木簡・竹簡に筆で漢字を書いていた時代、筆を右手に持ち、簡を左手に持っていました。筆先と、簡の角度が垂直になるように自然に調整して書いていました。こうすると、筆の先が線の中央を通る「正峰(中峰)」で書かれます。
現在でも正峰が、中国の正統的書法と言われています。
しかし、紙が発明され机の上で書こうとすると、筆先に四十五度の角度がついてしまいます。これを、避けるために腕を上げたり、人差し指をあげたりする方法が考案されました。
他方で、そのまま四十五度の角度をつけたまま、書いたのが王羲之でした。これは、偏峰(側峰)と呼ばれます。この方法で書くと、線の上部を筆の先が、下部を筆の腹が通ることになり、線に変化が生じます。
さらに、王羲之は手首を動かしてスナップをきかせて書いたので、変化に限度がなくなり多彩な書線から、芸術性が生み出されました。*①
王羲之の書法はそれまでの中国の書の歴史において、革新的であり挑戦でもありました。でも、それは古法に背くものではないばかりか、独創的で人々にも受け入れられたのです。
出典:*①「書」を考える 松村茂樹 二玄社