許由はなぜ隠棲したのか(3)荘子を草書で書く

3.名目は実質の客

荘子

 「許由曰、子治天
  下、天下既已治也、而我猶代子、吾将
  為名乎、名者實之賓也、吾将為
  賓乎」


読み下し文は、「許由曰く、子、天下を治めて、天下既已に治まれり。而るに我れ猶お子に代わる。吾れは将に名の為めにせんとするか。名は実の賓なり。吾れは将に賓の為めにせんとするか。」

許由が答える、「あなたが天下を治めて、天下はすでによく治まっている。それなのに私があなたに代わる。私は天子という名のために代わろうとするのか。名目は実質の客で、一時的な仮のものにすぎない。私は実質をつとめないで仮の客のためにつとめようとするのか。」

ここで、前回の「至人には私心がなく、神人には功績がなく、聖人には名誉がない」を思い起こされるでしょう。許由は帝という名のために、帝に即位したりしないと答えています。それは、実がないからです。

 参考文献:荘子 金谷治訳注 岩波書店