許由はなぜ隠棲したのか(2)荘子を草書で書く

2.雨が降っているのに水をかけている

荘子

 「時雨降矣而猶
  侵灌、其於澤也不労乎、夫子
  立而天下治、而我猶戸之、吾自
  視缼然、請致天下


読み下し文は、「時雨振るに而も猶お侵灌す、其の沢に於けるや亦た労ならずや。夫子立たば而ち天下治らん。而るに我れ猶おこれを主(つかさど)る。吾れ自ら視るに欠然たり。請う天下を致さんと。」

季節にかなった雨が降っているのに、まだ灌漑で水をかけている。その潤いについていうなら、なんとむだぼねではありませんか。先生が即位されたなら 天下はよく治まるでしょうに、私がなお天下を主宰しています。反省してみるに、私はとても不十分です。どうか天下をお譲りしたい。」

堯帝が天下を譲りたいと申し出た場面です。空には太陽が出て明るいのにまだたいまつをつけていたり、天から雨が降るのに灌漑でさらに水を溜めているのは無駄なことではないか、と問うています。それだけ分かっているのなら、よせばいいのにと考えますよね。

 参考文献:荘子 金谷治訳注 岩波書店