維盛北の方との交流(6)建礼門院右京大夫集
6.またお会いする日もありましょう
そのお返しの歌は、上が白い聞くの薄様の紙に書いて、どなたからの歌かわからなかったので、ちょうどいらした知盛の中将にことづけました。本当にあたりの様子は名残惜しげに時雨ていて、もの寂しい。
「たちかへる なごりをなにと をしむらむ
ちとせの秋の のどかなる世に」
用字は、「多地可へ流奈こ梨を那耳と越志
牟羅む遅登せの秋農ゝ度可那る
よに」
歌意は、「お帰りになることがお名残惜しいとおっしゃって、どうしてそれほど離れがたく思われるのでしょうか。末長く続く平和な世にまたお会いすることもできるでしょう。秋もまためぐってくるでしょう。
この歌には、これから襲いかかる世の変動を未だ知らず栄華に暮らす人々の一面が表れていて、切ない気持ちになります。こちらもひとまず、ここで一段落としておきましょう。次回からは、荘子を取り上げることにします。
参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社