御所の近くが火事に(4)建礼門院右京大夫集
4.火急の事態にも慌てず
緊急事態においても格式に則り、避難をされたのでしょう。
中宮様は、「御手ぐるま」(輿の形の屋形に車輪をつけて人の手で引く車)で、「行啓」(外出される)ということでした。
その時、「小松のおとど」(重盛公)は大将で装束に身を包んで、矢を背負い参上なさったお姿が、大層ご立派だったので、作者が一首詠んだのです。
用事は、「宮者御手くる萬耳弖行
啓あるへしと所き故え四古万
つ農於とゝ大将爾て直衣二
矢負ひ弖中宮の御方へまゐわ
多万り志ことから奈登いみ
しう於本え支」
御所のお近くが火事でどうなることかと、案じていましたが、大将の凛々しさに歌も詠むほどであったとは驚くばかりです。
参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社