春の尽きるころ朗詠したい(3)和漢朗詠集より
3.春を惜しんで
釈文:「惆悵春歸留不得 紫藤花下漸黄昏」白
書き下し文は「惆悵す春歸って留むれども得ざることを 紫藤の花の下漸(ようや)くに黄昏たり」
鑑賞:『文集』「三月三十日、慈恩寺に題す」の尾聯。この句は院政期に、三月尽の詩会席上で、詠ぜられた。(『本朝無題詩』芭蕉もこの句によって発句を詠んでいる。
大江千里『句題和歌』春には上句を題にして「歎きつつ過ぎ行く春を惜しめどもあまつ空からふりすてて行く」がある。
現代語にすると、「嘆き悲しんでおります。春を惜しんで引きとめようとしても、春は帰ってしまうのです。藤の花にも、春の最後の一日が暮れて黄昏色になってきました。」
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫