旧暦三月三日桃を付して口ずさむ(6)和漢朗詠集から

6.流れる杯が石に

釈文:「礙石遅来心窃待 牽流遄過手先遮」雅規

書き下し文は「石に礙(さは)って遅く来れば心窃(ひそ)かに待つ 流に牽(ひ)かれて遄(はや)く過ぎれば手先(ま)づ遮(さいき)る」

鑑賞:曲水の宴は上流から流れてくる杯が自分の前を流れ切らないうちに詩を作り、杯をとり酒を飲む。そのドキドキした気持ちを巧みに詠み、後年人口に膾炙した。『謡曲』「安宅」などをはじめ、江戸の三味線歌曲にも引用されている。

現代語にすると「曲がりくねった曲水を流れる杯が石にさまたげられて遅くなると、詩作の済んだ者は早くくればよいと思い、逆に流れに乗って早く来るのに、まだできていないものは手を出してとどめて詩を作ろうとする。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫