旧暦三月三日桃に付して口ずさむ(1)和漢朗詠集から
1.桃源の行より
春がやって来ると、桜の話題でもちきりになる日本だが、中国では桃の花が神聖な花として大切にされてきた歴史がある。とりわけ旧暦三月三日、上巳は五節句の一つとして祝い、宮中では曲水の宴を張った。今年は4月11日がその日にあたる。
釈文:「春来遍是桃花水 不辨仙源何處尋」王維
書き下し文は「春来っては遍ねくこれ桃花の水なれば 仙源を弁(わきま)へず何れの処にか尋ねむ」
現代語にすると「春が来て、いたるところに桃の花が咲き、川の流れに花びらが浮かんでいる。昔、武陵の漁夫は流れてくる桃の花を辿って桃源郷に着いたという。どこへ訪ねていけばよいのだろうか。」
鑑賞:王維が十九歳の時陶淵明の影響を受けて作った「桃源の行」の一節である。「桃花の水」仲春三月に桃の花が満開の時に雨が多く川いっぱいに流れることをいう『礼記』月令
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫
粘葉本和漢朗詠集 伝藤原行成筆 二玄社