窓を打つ雨の音に(8)和泉式部日記より

8.それでは、もうお出でには

釈文:「さは知りたまへりや』とあり。御返り、『今はよもきしもせじかし大水の 深き心はかはと見せつつ 」

選字は「さはし利多ま遍りやと阿里御返り 『今波よ裳きしも勢志可事大水農 布可記心盤か者と美せ徒ヽ」

鑑賞:「さ」直前の宮の歌をさす。「きし」に「来し」と「岸」を、「川」に「彼は」をかけた。「深き」「川」は「大水」の縁語。

歌意は「今はよもやお越しにならないのですね。深いお心は大水の出た川のようだとおっしゃておきながら。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社