窓を打つ雨の音に(3)和泉式部日記より

3.あの烈しい雨の中で

釈文:「よもすがらなにごとをかは思ひつる 窓打つ雨の音を聞きつつ」

選字は「夜も須可ら那耳こ登をか者於母日つる窓 う徒あ免農お度を記支川ヽ」

鑑賞:「窓打つ雨」は白氏文集の『上陽白髪人』の雑言句。上陽宮に幽閉された玄宗皇帝の後宮の一人、上陽人は天保五年以降、楊貴妃が寵愛を受けてから疎んぜられた。「秋夜長、々々無眠天不明、耿々残燈背壁影、蕭々暗雨打窓声。」

『かげろふ日記』に「秋の夜長し 夜長くして眠ることなければ」の句が引かれ、『源氏物語』、『和漢朗詠集』など多くの作品に引かれる。

歌意は「一晩中何を考えていたとおっしゃるのでしょうか あの激しい雨の音を聞きながらあなた以外の人のことを思えましょうか。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社
  和漢朗詠集 川口久雄 講談社学術文庫