うぐいすの声にいざなわれて(3)和漢朗詠集を書く

3.朝霧のかなたから

釈文:「咽霧山鶯啼尚少、穿沙蘆笋葉纔分」元
書き下し文は「霧に咽ぶ山鶯は啼くことなほ少し 沙を穿つ蘆笋(ろじゅん)は葉わづかに分れたり」

鑑賞:大江千里『句題和歌』春に、この漢詩を上句を題として「山深みふりくる霧にむすればや鳴く鶯の声のまれなる」がある。

『句題和歌』で大江千里は、『白氏文集』の詩句を題材として七十五種、白楽天の親友である元稹の詩句を題にして十首、その他の詩人の詩句で三十一首の和歌を読んでいる。これは宇多天皇時代に文雅志向が高まったことに相応した画期的な出来事であった。

現代語にすると「朝霧のかなたから、むせぶように山のうぐいすが啼いている。その声が少ないのは春まだ浅いからだろう。水辺の蘆も砂を突き破って芽を出しているが、やっと葉が分かれたところだ。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫